リモート式アンテナ切替器の製作

 

7L4WVU 原口忠

 

タワー上の4本のアンテナを1本の同軸ケーブルで切り替えて使用すること

ができるリモート式アンテナ切替器(写真1,2)を製作しました。市販品を

見たところ米国AMERITRONのRCS-4がほぼ同様の機能を有するようですがWeb

上で回路情報が見つからなかったため手持ちの部品で作れるよう自分で考えて

みました。短波帯のみで使用可能という仕様ですが、1.9MHzから28

MHzまでWARCバンドを含めて9バンド分が1本のケーブルもスッキリし

て故障や誤動作もなく非常に良好に動作しています。

写真1 屋外用リレーBOX

 

写真2 屋内コントローラー

 

 

 

1.本装置の特徴

 @屋内のコントローラとタワー上のリレーボックスを同軸ケーブル1本で接

続して4本のアンテナを切り替えられる。制御用信号は同軸ケーブルに多重し

ているので個別に制御ケーブルを必要としない。

 

 Aリレーボックスでは同軸ケーブルの外皮側も芯線側と連動して切り替える

ことができるため、バランを使用していない平衡型アンテナも接続できる。

 

 B手持ちの部品で安価に製作可能。短波帯に限定すれば損失もなく快適にマ

ルチバンドアンテナを使用して運用できる。

 

 

2.回路と原理

  図1に回路図を示します。回路は屋内に設置するコントローラー(写真2、4)

とタワー上に設置するリレーボックス(写真1、3)で構成され同軸ケーブルで

接続されます。回路はコントローラ内の電源回路にて24Vと12Vの2種類の

直流電圧を発生させて、それぞれスイッチのポジションにて電圧と極性を変化さ

せることで同軸ケーブルを経由して、リレーボックス内の4回路のリレーをそれ

ぞれ動作させるように考えました。すなわち、極性に対する制御はダイオードの

向きで行い、電圧制御については12V印加時の12Vリレー単独動作と24V

印加時においては24Vリレーの空き接点を使用して12Vリレーの切り離し動作

を行うことで対応しています。

  また、制御電圧は信号と同じ同軸ケーブルに重畳しますので、受信時の雑音低

減の観点から電源にはスイッチング電源を避けて手持ちの部品でトランジスタ式の

安定化電源を使用しました。

図1 回路図

 

写真3

写真4

 

 

 

 

3.製作と特性

  製作はすべて手持ちのジャンク部品を使用しましたが、リレーは性能に影響

しますので新品のよいものを使用されることをお勧めします。タワーに設置する

リレーボックスはホームセンターで購入したプラスチック製の配線分岐箱です

(写真1、3)。

 

  回路は、タワーの上にバランなしの平衡型アンテナ(ZLスペシャルや八木

アンテナ)とタワー接地型のスローパーがあがっておりますので同軸ケーブル

の外側も芯線と同時に切り替えることができるようにしています。したがって、

不平衡型アンテナだけであれば金属シャーシで芯線のみ切替えて対応するのが

よいと思います。

 

  製作過程で発生した不具合としては、24Vリレーでヒステリシス特性が

強いものがあり、24Vリレー動作後に12Vに切り替えても24Vリレーが

OFFせず動作したままとなることがありました。微妙なところなのですが動作

を確実とするために切替えスイッチのポジションの順番を入れ替えて必ずスイッ

チの隣のポジションが逆極性動作になるようにしました。これにより動作していた

リレーは確実にOFFすることになります。

  特性について、100MHzまでの挿入損失(コントローラとリレーボックス)につい

て1m程度の同軸ケーブルを介して測定したデータを写真5に示します。

 

写真5では、30MHzにおいて挿入損失0.8dB程度となっています(ただし、

間に接続コネクタ、ケーブルを含む)。また、端子間アイソレーションを写真6に

示します。30MHzで40dB程度確保できております。ラフな作りですが、

特性をみると30MHz以下では十分使用可能なレベルになっていることが分かり

ます。配線を最短で工夫すれば50MHzも可能かも知れません。

写真5 挿入損失

 

写真6 アイソレーション

 

 

4.使用感

  筆者のところではタワーとシャック間の同軸ケーブルは地中埋設しており

簡単にケーブルを増設するのができません。当初、ケーブルは2本もあれば

よいかと思っていましたが、その後WARCバンドのアンテナを自作し同軸

ケーブルを増設する必要が生じたときにはケーブル埋設場所が花壇になってお

り掘り返すことができなくなっていました。

 

  この装置のおかげで、15mのクランクアップタワー上に、@トライバンド

スローパー(160m、80m、40mバンド用自作)、A2エレ釣竿八木

(30mバンド用自作、6mバンド用6エレのブームを共用)、B3エレトライ

バンド八木(20m、15m、10m用ナガラ製)、そしてCデュアルバンド2

エレZLスペシャル(17m、12mバンド用自作、ナガラ製トライバンド八

木のブームを共用)が上がっており、短波帯の全アマチュアバンドを1本の同

軸ケーブルで給電することが可能となりました(また同じタワーの6mバンド用

6エレは別の同軸ケーブルを使用)。筆者の全アンテナを写真7に示します。

 

  また、耐電力については、200W連続送信でも問題はありません。計算上で

は500W出力でも使用可能です。心配していた受信における電源ノイズについて

もスイッチング電源を避けたことから問題はありませんでした。

 

  なお、本装置の欠点としては、電源OFF時にアンテナのすべてが無線機と切り

離されるようになっており、運用時にコントローラの電源を別途投入する必要があ

ります。運用上不便を感じたので無線機(自作)の電源スイッチと共用にして無線

機がONの時にのみアンテナ切替器に電源が供給されるようにしています。

写真7 1.9〜50MHzのアンテナ群