50MHz SSBトランシーバの製作


私がよくQRVする50MHzSSBでは,ハンディ機といってもポケットに入るほど小さなものがありません.

今回,『ハムフェア,94』でジャンクのクリスタル・フィルターを100円で入手したこともあり,手持ちの部品を利用してポケトラを自作してみました.




設計目標
最初に本機の設計にあたり,以下の設計目標を立てました.

@小型化:タバコl箱分の大きさを目標とする(タイトル写真,写真1)
A広帯域:VXOで100kHz以上は可変したい
B出力電力:移動でQSOを楽しむには50mWは必要
C低消費電力:電池で長時間楽しむには一般のポケトラと同様に受信時は40mWくらい,送信時は120mWくらいとしたい

また,こォLらの設計目標を実現するため,製作にあたっては小型の部品を用い,回路も送受信が可能な限り兼用できるように配慮しています.

回路梅成
●構成
本機のブロック・ダイヤグラムを第1図に回路を第2図,第3図に示します.ボケトラとはいえ回路構成は一人前になっており,IFを7.8MHzとし,42.3MHzのVXOで50MHzに変換するシングル・コンバージョンです.
変調,復調およびIF増幅を1個のICで行っているほか,ミキサーは双方向で使用できるという理由から多少の損失は我慢してDBMを採用しています.また,50MHzの4段送信用増幅器の2段を受信用増幅器として共用することでスペース・ファタ夕一を向上させています.本機を基本に固定機を自作される場合は,VXOの発振の後にバッファー・アンプを,また,7.8MHzのIF段に送受信ともにl段のアンプを入れるとよいと思います。

●7.8MHzSSBジェネレーター
本回路は,「アマチュアのV,UHF技術」(CQ出版社)に載っていたものを参考に改良したものです.オリジナル回路では低周波出力が不足気味でしたので,マイク・アンプおよび低周波増幅を1段追加してあります.
クリスタル・フィルターは,CB機のジャンク基板に付いていたものを使用しました.ラダー型で水晶4個くらいで自作すれば,さらに小型化が可能です.

●VXO&ミキサー
VXOは,FET1個で発振させ,バッファー・アンプは省略しており,DBMをドライブするには出力不足ですが,小型化達成のため我慢することとします.

水晶は,ミズホ通信のピコ6で使用していた14.15033MHzのものを3逓倍しコイルは手持ちのマイクロ・インタクターをいろいろと交換実験して,いちばん安定して広範囲にカバーできるものを選択しました.

水晶は,VXO用ということもあり,最終的には160kHzほどの幅で安定して可変できるようになり大成功を収めました.DBMは1N60とジャンクのトロイダル・コアで自作しましたが,かなり大型ですので,今後製作する方は,1チップのクワッド・ダイオードや小型のトロイダル・コアを用るとよいでしょう.

●RFアンプ
FET4段のストレート・アンプ前段の2SK241の2段を送受信共用としています.ミキサーにDBMを用いたため,送信受信ともに相当損失がありますが,ファイナルを2SK125パラレルとして出力は,最大70m Wまで得られました.送受信の切り替えは,4回路の押しボタン・スイッチですべて行う計画でしたが,4段アンプが送信時に発振したので,仕方なく小型リレーを1個入れてアイソレーションを向上させています.

製作
●基板と部品の実装
小型に製作するために両面基板の両面に部品を空中立体配線しています(写真2参照).この方法は,QST誌の製作ではよく紹介されていますが,慣れると手軽に早く自作でき,アース面が広く確保でさるため回路動作が安定するメリットがあります.
コイルはジャンクの7Kタイプをすべて枚に寝かせてシールド・ケースを基板にハンダ付けしています.基板の外側に調整コアが向くように取り付けます.市販のFCZコイルも使用できます.



●製作手順
まず,基板をタバコの箱のサイズに切ります.クリスタル,フィルター実装部分が基板の1/4を占めますので,残りのスペースはごくわずかです.
製作は,SSBジェネレーターから部分的にテストしながら進めます.基板の片側にSSBジェネレーターとVXO,反対側にDBM,RFアンプ,切り替えスイッチを取り付けました.部品配置などは写真3,写真4を参考にしてください.

●調整
調整は,SSBジェネレーターが完成した時点でキャリア発振をカウンターで確認して,7.7985MHzとなるようにコンデンサーを調整します.スペースに余裕があれば,トリマーを使うとよいと思います.ディップメーターなどで7.8MHzの信号入力を入れてAFアンプから音が出ればOKです.送信はジェネレーター出力にオシロスコープまたは受信機を接続して確認します.その後,VXOを製作し,安定に最も可変幅が広くなるようにL1を調整します.50kHzくらいの可変幅はなんとか取れるのではと思います.RFアンプは,送受信時に最大感度となるように調整します.送信出力の調整は,出力部に50オームの抵抗を接続して50MHzが確認できるオシロスコープで波形を観測しながらコアを同します.SSBピーク出力電力(W)は,
オシロスコープでピーク電圧Vp(V)を測定すると以下の式で算出できます.

P(W)=(Vp/1.41)2/50
本機では,波形のピーク電圧が約2.3Vで約50m W出力となりました.

結果
設計目標に対する本機の最終仕様は,第1表に示すとおり,初期目標をクリアーすることができました.ある日曜日に自宅から本機と5m高のHB9CVを使用して交信できた局を第2表に示します.50m Wという出力は,交信するには苦しいというところですが,RS59+で人感していれば,51くらいのレポートが返ってくるようです.

受信感度は,DBMの損失とlFゲイン不足のためあまり良くないのですが,QRPという点からはちょうどよいくらいです.ローカル局とQSOしレポートをもらったところ,音質はやや堅めであるがキャリア編れもなく.40分のQSOでも周波数はほとんどずれなかったので,なかなかいけるのではとのことでした.

本機の製作は,自作に慣れているOMでしたら,休日1日もあれば完成できるレベルのものだと思います.製作は初心者でも可能と思いますが,いきなり小型化は避けたほうが無難でしょう.

私は,金曜の夜帰宅後,夜11時から徹夜で製作を開始して土曜日の昼には完成しました.これは,私にとって最短記録です.これまで出張,旅行の際にはビコ6を持参していましたが,結構かさばっていましたので,これなら気軽にカバンに入れて持ち歩けます.アンテナ端子はRCAピンジャックを使用していますが,今後,本機に合った小型のホイップ・アンテナを製作して移動運用を行いたいと思っています.

く参考文献)・「アマチュアのV‐UHF技術」CQ出版社



・系統図
・回路図@
・回路図A




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