タイトル:WARCバンド用10/18(24)MHz釣竿ビームアンテナの製作

副題:既設アンテナのブームに追加する省スペース型WARC釣竿ビーム

 

コールサイン:7L4WVU

氏 名:原口忠(はらぐち ただし)

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筆者は開局以来6年間14−21−28MHzトライバンド3エレ(ナガラHX330)

と50MHz 6エレ(CD社CL6DX)をタワーに上げて楽しんでいました。WARC

バンドについては、タワー上に新しいビームアンテナを追加するスペースがな

くワイヤーアンテナを製作したものの、海外まではなかなか飛んでくれません

でした。そんな状況で何か良い方法はないかと考え、最終的に「10MHz 2エレ

短縮八木アンテナ」と「18MHz ZLスペシャル」を既存アンテナのブームを共用す

ることで追加でき、結果的には18MHzのZLスペシャルを24MHzでも使用する

ことでWARC3バンドをビーム化することができました。

 

  今回の製作では、4.5m定尺のグラスファイバー釣竿を使用することで低価格

化を図り、アンテナブームを既設のものを共用したので軽量で省スペースかつ既設

アンテナを降ろさないで新アンテナを追加できる等、メリットがあります(写真1)。

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1.10MHz用2エレ短縮八木

 

<事前検討>

  釣竿による2エレですがフルサイズですとエレメント長は15m程度とか

なりの大型になります。4.5m長の釣竿で先の細い部分を除くと4mが

使える部分となります。したがってエレメント長は8m程度となり50%近い

短縮アンテナとなりました。ローディングは2本のエレメントを接続する直

径32mm、1m長の塩ビ管の両端にACコードを裂いたワイヤーを巻きました。

 

寸法についてはアンテナシミュレータMMANAで求め、調整後に図1のよう

になりました。2エレは導波器型と反射器型がありますが、短縮の場合は反

射器型でないと何故かうまくシミュレーションできません。そういうことで反射

器として最適化してみた結果、よい感じになりました。インピーダンスは22オ

ーム程度となりますので、インピーダンス変換とバランが一体化したものを自

作しました(写真2、図2)。

  本アンテナは50MHzの6エレ(CL6DX)のブームに同居させることにしま

した。強度的には心配ですがエレメント間隔が、3m程度ですので何とかなりそ

うです。

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    図1 10MHz用2エレ短縮八木の寸法

 

 

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   写真2 4:9インピーダンス変換器

 

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   図2 4:9インピーダンス変換器回路図

 

<製作>

  製作は、1m長の塩ビパイプの両端に釣竿を差込ます。このとき、釣竿

の持つ部分(太い部分)には滑り止めの糸が巻いてありますので解いた後

にビニルテープを巻いて太さ調整をします。エレメントブラケットはホームセン

ターで購入したUボルトとアルミ板で自作しました。

 

  エレメントは、今では殆ど使われなくなった300オームのTVフィーダです。

これは銅線よりエレメントの太さが見かけ上太くなり帯域が広く取れ釣竿に這

わすと良くフィットしてくれます。入手できるか心配でしたがホームセンターや家

電販売店でまだ結構販売されていました。また、コイルは、タワー上で巻き数が

調整できるように圧着端子でネジ止め構造とします(写真3−1〜3−4)。

 

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写真3−1 10MHz放射器(これだけで移動用ダイポールとして使える)

 

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図3−2 コイル部(Φ32塩ビ管に巻く。最終的に反射器は19回、放射器は18回となった)

 

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図3−3 自作エレメントブラケット(給電部)

 

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図3−4 エレメント取り付けの様子(エレメントはぶら下げるようにした)

 

<取り付け、調整>

  取り付けは、エレメントを地上で組み立て1本ずつタワーの上に持って

あがり、既存アンテナのブームに取り付けます。

  最初にエレメントの共振周波数を求める必要がありますので放射器か

ら取り付けます。エレメントは軽量なので片手で持つことができますので作

業は簡単です。  調整は、ダイポールとしてコイルの巻き数を決定すること

から始めます。ディップメータを使い反射器なしの状態でコイルの巻き数を

調整して大体10.1MHzで共振するようにします。筆者の場合、計算値よ

りコイルは2回ほど少ないところ(放射器18回)で指定周波数となりました。

コイル1回で約400kHz程度共振周波数が変化するようです。また、微

調整としては既設アンテナ(今回はCL6DXの導波器)のエレメントとの距

離を変えて追い込みます。近づけるとエレメントのコイルに並列コンデンサが

入ったような動作となり共振周波数は下がります。反射器は同じエレメント長で

コイルの巻き数を1回多め(19回)にしました。

  最終調整は、2エレにした状態で4:9のインピーダンス変換器を取り付け

自作のインピーダンス計で指定周波数において50オームとなるよう既存エレ

メントとの間隔を調整します。

 

<最終特性>

  バンド内VSWRは自作のインピーダンスブリッジを使用して測定した結果、

写真4に示すとおり1.5以下となりました。受信比較では、これまで使用して

いたスローパーと受信比較すると海外局ではS3つくらいよくなり、自作200W

送信機を使って2ヶ月で約90エンティティ程度交信できました。国内交信は、

スローパーと殆ど変わりない状態ですが、九州くらいになると2エレの方が強

力になります。ビームパターンは、短縮八木でエレメント間隔3mとナロース

ペースですので素晴らしいパターンとは言えませんが、海外局でフロントS9が

サイドS6、バックS8くらいです。しかしながら打ち上げ角はかなり低くなってい

るようです。心配していた50MHz6エレへの影響は、追加したエレメントを極力

6エレの輻射器から離したことから殆ど感じられませんでした。

 

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  写真4 リターンロス特性(VSWR

 

 

 

2.18MHzZLスペシャル(24MHzも運用可能)

 18MHzのビームアンテナのブームは、既設のナガラ製HX−330

(3エレトライバンダー)のブームに同居させました。アンテナは少しでもゲ

インが稼げて釣竿に適したものとしてZLスペシャルを採用し、エレメントには

300オームのテレビフィーダを使用しています。こうするとエレメント長が約

80%の長さとなり、市販の4.5m長のグラスファイバー釣竿を使うと丁度良い

長さとなります。

  寸法を図3に示します。機械的な構造は、前述の10MHz2エレと同じです。

 

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図3 18MHz用ZLスペシャル寸法図

 

<最終特性>

  最終特性は、ビームパターンはフロントS9、サイドS3、バックS4程度で

良好な動作となりました。200W自作機で1年間運用して170エンティテ

ィと交信できましたのでまずは使えるアンテナと言えます。既設のナガラの

トライバンダーへの影響もあまりないようです。

 

  写真5にリターンロス特性を示します。この特性を見てもお分かりのように

25MHz付近にも共振点があり、24MHzバンドも使えることが分かりました。

受信してみるとこれまで使っていたワイヤーアンテナよりかなりFBで2エレ程

度のゲインはあるようです。VSWRは1.6程度でした。ただし、フロントより

バックの方がS1つほどよいのでアンテナを逆方向に向ける必要があります。

24MHzの成果としては、自作送信機の出力があまりでないこともあり、あまり

アクティブではありませんでしたが

50Wで1年間運用して60エンティティというところです。

  最後に、18MHzのZLスペシャルが24MHzで使えるという話は初耳

でしたのでシミュレーションし以下動作確認を行いました。追試された方が

おられましたら連絡をお願いします。

 

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写真5 リターンロス特性(VSWR)

 

<24MHzの動作について>

  本誌でも有名なシミュレーションソフトMMANAを使用して、まずは

18MHzZLスペシャルのパラメータを入力して18MHzにおける電流分布、

ビームパターンを図4−1、図4−2に示します。次に、同じパラメータを使っ

て周波数のみを24MHzにしてみた結果は、電流分布が図5−1、ビーム

パターンが図5−2となりました。得られたデータから、ビームパターンはFB

比がマイナス(つまりバックの方が強い)ということで実際と一致しています。

また、各部の電流分布を見ると電圧給電に近い動作となっているということが

分かりますのであまりパワーは入れない方がよいかも知れません。インピー

ダンスはシミュレーションでは32−j283(Ω)とVSWRは無限大と得られま

したが実際はVSWRが1.6で使用できているのは周りのアンテナや同軸ケ

ーブル長により整合が取れていると思えます。

 

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図4−1 18MHzの電流分布

 

 

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図4−2 18MHzのビームパターン

 

 

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図5−1 24MHzの電流分布

 

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図5−2 24MHzのビームパターン