タイトル(題名)1.8MHz430MHz オールバンド自作無線機

 

副題:開局6年で1万6000局と交信、全市全郡+DXCC310エンティティをコンファームした

自作システムのご紹介

 

コールサイン:7L4WVU

氏 名:原口 忠(はらぐち ただし)

 

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無線ごっこ&メンコ集めに飽きてしまった私は、もっとアマチュア無線を楽しむために子供の頃の楽

しかったラジオ作り(分解?)を思い出し、無線機をすべて自作して再開局することを思い立ちまし

た。ただ、作っておしまいでは面白くありませんので目標として性能を要求されるDXやコンテスト

に耐えることができ、運用を通して装置のグレードアップを楽しもうというものとしました。装置は

5年がかりで帰宅後に少しずつ製作して最終的には1.8MHzから430MHzまでのオールバン

ド最大200W出力(写真1)というものです。自作機のみで免許状を受けとったときは久々の感動を

味わうことができました。
 
   素晴らしい性能のメーカー製品が普及しているアマチュア無線界で、今更自作などと思われる方も多いで

しょう。しかし、自作装置でもDX、コンテストと十分に楽しめ、世界で1台の装置から仲間とラグチ

ューしたり、装置改良や新機能の追加実験等で発展させていくことは自作局オーナーのみが味わえる醍

醐味です。
 
   本稿は2部構成とし、第1部では自作装置の概要を紹介、第2部では私なりに自作機で6年間運用して感じ

たことを記載しました。インターネットの普及で、自作局においても楽しみ方が拡大していることを感じ

て戴ければ幸いです。

 

<写真1 オールバンド自作無線局・・・筆者のQSLカード>

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第1部 自作無線機の概要

 

1.システムデザインと装置外観
 
HFからUHFまでのオールバンドをどのようにすれば簡単に実現できるか検討、最終的に基本装置+ト

ランスバータ方式を採用しました。親機の周波数は、@メインバンドであることと、A430MHzに周

波数変換した場合のイメージ比を考慮した結果、50MHz帯にすることにしました。
基本装置系統を図1に示します。4つの大型シャーシ(@50MHz受信機、A50MHz送信機、

B外部VFO、Cオールバンド・トランスバータ)に分かれており、さらに別シャーシでリニアアンプを

備えています。とても大きな装置になっていますが、操作つまみの間隔が広く操作性がよいことと後の改造

や追加改良が楽に行えますので自作固定機の場合には小型にこだわる必要はないと思っています。

 

<図1 全体系統>


 
シャーシ構成を送信機と受信機に分けたのは、自作装置のため常に発射する電波の質をモニターする必要

があると考えたためですが、切替え回路等がシンプルになり回路が送受で独立しているため改造の際にメリ

ットがあります。実際、毎週のように装置に手を加えておりますが、容易に作業ができ助かっています。
 
私は自作装置については回路よりも装置外観や構造について重要視しています。理由は、優れた性能のトラ

ンシーバーを自作したとしても、パネルデザインが貧弱で、シャーシ内に余裕がなければ完成後にそのまま押

入れ直行となる可能性が高いからです。多大な時間とお金をかけて作るのですから、シャックに入れば無線機

のスイッチを入れたくなるようなデザインにしたいところです。個人的には戦前のOTの自作無線局シャック

写真(取手つきアルミシャーシにバーニアダイアル)に憧れましたので装置の基本形として採用しています

(しかしながら周波数は反則してデジタル表示です。hi)。デザインは、バーニアを単にパネルにつけても良い

のですがスモークのアクリル板1枚入れるだけでも感じがかなり変わります。今回は各部品の配置をそろえる

ことと、ゆったりとしたシンプルなデザインで思想統一しました。製作期間を含めて10年間、飽きもせず

毎日さわっており、コンテストなどではこの装置で24時間運用することもありますので長期間の使用にも

飽きないデザインになっていると自分では思っています。
 

2.親受信機(50MHz)
 
親送受信機を写真2に示します。下側が受信機になり系統は図2のように構成はシンプルなダブルスーパで

す。混信対策としては手持ちのクリスタルフィルタを用いたIFシフト、PBTを追加しています。また、私

のQTHはJR武蔵野線の高架まで70m、関越自動車道まで50mという雑音地帯ですので、ノイズブラン

カはルーフィングフィルターの帯域を可変できるようにしたり、雑音ピックアップ用アンテナを配備したノイ

ズ打ち消し方式も併用できるようにしています。運用可能モードはSSB、CW、RTTY、AMを備えていま

すが特にAMは同期検波方式とし、50MHzのAMや短波放送受信を考慮しています。受信性能については、

メーカー製品を持っていないため何とも言えませんが、DX通信においても遜色はないようです。

 

<写真2 50MHz親送信機(上)と親受信機(下)>

 

 

<図2 受信機系統図>


 
受信機内部は写真3,4のようになっており、信号ラインはブロック毎に両面プリント板で作ったユニ

ット構造とし内側に部品を直接半田付けしています。プリントパターンを作成しないことで短時間に製作

でき、広いアースで動作が安定、加えて後から改造が自由にできるメリットがあります(写真5)。

<写真3 受信機上部>

 

<写真4 受信機下部>

 

<写真5 コリンズのメカフィル、水晶フィルタを使用したPBTユニット>

 

 

3.親送信機(50MHz)
 
送信機は、フィルタ方式のSSB変調器にコンバーターというオーソドックスな構成です。RFスピ

ーチプロセッサを実装し、50MHz1W出力としています。送信機としては出力部にRFモニター

端子を用意して常にスペアナでスプリアスを監視できるようにしています。マルチバンドの場合アンテナ

VSWRや気温の変化で自己発振することもよくありますので自作の場合はぜひとも設けておきたいもの

です。内部を写真6、7に示します。

 


<図3 送信機系統図>

 

 

<写真6 送信機上面>

 

<写真7 送信機 下面>

 


4.オールバンド・トランスバーター
 
写真8にトランスバータ(上)とVFO(下)の外観、写真9、10にトランスバータ内部を示し

ます。HFトランスバータ部は1.8MHzから28MHzまでWARCバンド含めて9バンドありま

すのでコイルの搭載や切替え方法について如何に簡単で省スペース化できるか考えました。最終的にプ

リント板を使用して写真11のように各バンドのコイルを配列してPINダイオードで切替え、さらに基

板は差し込み式にしておりマルチバンドで省スペース配列することができました。HF受信回路は短波

放送バンド近くで混変調が予想されますので、バンド毎に回路検討し、ローバンドはBPFのみで高周

波増幅なし、14MHz以上のハイバンドは2SK125で増幅しています。ミキサーは送受ともにダ

イナミックレンジが広いDBMを使用しました。HF送信電力増幅は、トランジスタによる広帯域アン

プでHFオールバンド約2Wの出力が得られます。なお、局発についてはアマチュアバンド用としてC/N

を重視し水晶発振としましたが、1MHzステップのPLL局発も備えていますので短波放送のゼネカバ

受信も可能です。

 

<写真8 トランスバータとVFO>

 

<写真9 トランスバータ上面>

 

<写真10 トランスバータ下面>

 

<写真11 HFオールバンド用受信コイル部>

 

 

  50144MHZトランスバータはFETを使用した受信クリコン、送信はDBM+ハイブリッド

電力増幅ICで簡単にすませて10W出力としました。
 
また、50430MHzトランスバータは、タクシー無線機を改造したものです。FM機では水晶を

変えて430のアマチュアバンドで使用する方法がありましたが、本機はSSBのトランスバータとして

使用しますので大幅に改造しています。UHFはあまり自作経験がなく局発逓倍等で苦労しましたが何と

か動作しています。送信増幅はタクシー機のようなFM無線機はC級アンプが採用されていますのでそのま

まではSSB通信には使用できません。したがって、バイアス回路を追加してAB級動作のリニアアンプに

改造し5W出力を得ています。
 
5.外部VFO
 
この部分は操作に直接影響するため、デュアルVFO化や付属回路等をいろいろ実験しており頻繁にパネ

ルデザインが変わっています。現在はDDSとし高安定性を実現しています。DDSは、秋月電子からキッ

トも発売されており、安価で高安定、高C/Nの可変発振が得られますので自作愛好家にとってはよい環境に

なったと思います。

 

6.リニアアンプ
 
HF、50MHzのリニアアンプは、ドライブ電力が小さいため真空管4X150Dを2本並列に使用した入

力同調式のGKアンプとしました。利得が高いため1Wのドライブで簡単に200W出力を得ることができます。

HF用は少し反則してジャンクで入手した真空管無しFL2100Zを改造していますので半自作というところ

でしょうか(写真12)。50MHz用は写真13に示すようなもので無線局免許において共に200Wとして許

可されています。

<写真12 HFリニアアンプ>

 

<写真13 50MHzリニアアンプ>

 

7.付属装置
 
RTTYターミナルユニットは写真14、15に示すようなST6型仕様にパソコンを使い自作ソフ

トで対応しています。あまり交信はしていませんがP5(北朝鮮)と14,21,50MHzで交信でき

ています。エレキーはJA1HHF局設計のPICを使った簡易メッセージキーヤです。

<写真14 RTTYターミナルユニット>

<写真15 RTTYターミナルユニット内部>

 

 

8.まとめ
 
前述の装置を使ってここ数年HFを中心に週末アクティブに運用しています。アンテナは昔購入した

メーカー品も一部使用していますが、釣竿を使った10MHz2エレ、18/24MHzの2エレZL

スペシャルの他、1.8/3.5/7MHzスローパーと自作品も増えてきました。
 
自作装置による運用はいろいろ工夫することで新しい発見やチャレンジ目標が設定できます。現在、

HF〜50MHzはオール自作の1kW局免許を目指して4CX1500BのGKリニアアンプの実験

を行っております(写真16)。自作機でのDXCCオナーロール入りも視野に入ってきましたので、次

は自作でEMEにチャレンジしてみたいと思っています。

<写真16実験中の4CX1500B 1kWリニアアンプ>